奈良へGO。
「おかわりありません」の言葉の意味を、内容を確かめにいく。
チェーンストークス呼吸がでているよとは聞いていた。
無呼吸の時間が結構ながいように感じる。
その視線を捕らえることはできないが、
どうやら、内面へと向かっているようにも感じる。
自分の中へ、過去へ、右へずれていく眼球運動。
時折、はっと見開く。
今、ここの光景は、届いているのだか、どうだか。
舌にかひがつき、唇は皮がむけた使われてない口腔からは、
病室に入るとすぐに膿の匂いがした。
小一時間かけて、顔のマッサージから始める口腔ケアをする。
たまに訪れる人間に、なにができるものか。焼け石に水にも思える。
自力での痰の排出は出来そうでいて、
しかし、なかなか思うように出ないのがもどかしい。
声をかけながら、スポンジで痰を、かきとりながら
無呼吸の時には、この人の意識はどこにいているのか等と思っていた。
呼吸が始まると、途絶えていたなにかが通うのか?
まだ、彼女の人生のなにかが、ぬぐい去れてない。
まだ、彼女は、この世界にいている必要があるのだ。
表情は、かなり柔和になり落ち着いてきたものの。
まだ、時がきていない。
そして、現状。
「今、最高の状態にあるように思います」という看護スタッフの言葉に
うそはない。
この長時間を、現状以上に悪化させず、
肺炎をおこさずに、いているのは、この病院の力だ。
脳の萎縮と、大規模な梗塞により
意識は内側へと向かい、外へは表出しにくい、あるいは出来ない。
彼女の生は、まだ終わっていない。
どんな風に、この状態を保っていけばいいのか、かなり途方にくれる。
心不全と不整脈と誤嚥性肺炎、
意識レベルの向上を求めるのは無理がある。
高カロリー輸液の管理と感染予防。
すべてを満たす、退院できる場というのはどこにあるのか。